あなたがいたから

家の物置の「宝箱」には、大事な手紙など思い出の品々が入っている。

その中の一つに、キャラクターの絵のついたポケットティッシュがある。まだ使っていない。
これは、私がまだフリーターだったころのものだ。
私がまだ「何も持っていなかった」ころの。

当時の私はひたすらに、毎日ハンバーガー屋のアルバイトに通っていた。
それは親や他のバイトさんからみればお遊びのようなものだった。
でも私は私なりに一生懸命で、仕事に対して必死だった。
私にはこれしかなかった。

ある日店の前で掃除をしていると、女性が一人、中を窺いながら思案顔。
歳は50代だろうか、どこかでお店を持っていそうな、キャリアの感じられるお洒落な大人の女性。
店に入ろうか迷っているらしい。

どちらから声をかけたか忘れたが、また何を話したか詳しくは忘れたが、私は彼女に空席や店の様子などお知らせした。そして彼女は、それなら、と店で一休みすることに決めた。

あとで彼女が店をでるとき、ニッコリ笑って私にくれたのがそのティッシュである。
「あなたがいたからここに入ったのよ。」

その時のじわっとした嬉しさは、何といったらいいのだろう。
ティッシュは、迷わず「宝箱」に収められた。

あれからもう10年も経って、今ではちゃんと仕事も有るし、生活も楽しい。
私も今や客として、店を楽しむ側になった。
あの時の彼女にはまだ、歳も雰囲気も及ばないけれど。
そして、カフェなどで店員さんがお客さんと和やかに話していると、
いつもその時のことを思い出す。

私が頑張っている店員さんを応援したくなるのは、そんなわけ。
20:23 | 仕事って何だ!なんなンだ!? | comments (0) | trackbacks (0) | edit | page top↑